昨秋頃からの乳がん検診のブームがピークを脱したような気がします。みなさんはもう受けましたか??ウェルタス銀座クリニックでは1年中受け付けています。
ガンの検診がブームになるのもおかしな話ですが、病気に対する興味を多くの方がもってくださったという点ではとても良いと思っています。「実は1年前からしこりがあって、気になっていたんですが、、、、、」と今回の波に乗って検査を受ける決心がついたという方もいらっしゃいました。検査を受けていただいて良かったと思います。
乳癌に関する情報が多く流通している昨今、乳がんの分野は世界規模で常にup dateされています。人種や地域による差もあるので欧米人のデータをそのまま鵜呑みにすることも出来ませんが、最新の報告を情報として活かせるよう日々勉強です。
今回は乳がんの検査から、乳がんの診断、治療までのおおまかな流れをご紹介します。
<診断までの検査>
検査は何度か紹介していますが、「視触診」、「マンモグラフィ」、「乳腺超音波検査」が基本的な検査です。もしこれらの検査で腫瘤が見つかった場合、より詳しく診断するための方法として「穿刺吸引細胞診」といって注射針を刺してしこりの細胞を一部取ってくる顕微鏡の検査があります。さらに多くの情報を必要とする場合(例えば乳がんならどんなタイプなのか、良性なら線維腺腫なのか葉状腫瘍なのか等の鑑別)には「針生検」という検査が必要になります。専用の針を使って腫瘤の一部分を削り取ってくる検査です。細胞診よりも採取量が多くなるのでより詳細な情報を得ることができます。これと同様にマンモグラフィをしながら針生検を行う「マンモトーム」という検査はエコーで腫瘤がわかりにくい非浸潤癌(DCIS)の診断に有用です。針を刺す検査では基本的に局所麻酔をして検査をします。
<乳がんと診断された後の検査>
基本的な検査だけで乳がんを強く疑った場合や、上記の検査で乳がんと確定診断された場合には全身の検査が必要になります。《がん》つまり悪性腫瘍の場合に忘れていけないのは《遠隔転移》があるかどうかです。リンパ節転移や肺転移、骨転移などがないかを調べるためにCT検査やMRI検査、骨シンチなどを行います。PET-CT検査を行う施設もあります。乳房のMRI検査は乳腺内の病気の広がりを見るのに必要な検査で、乳房温存術(部分切除術)が可能かどうかの判断にもなります。病気の大きさやリンパ節転移の有無、他臓器転移の有無によってTNM分類という病期(ステージ分類)が決まってきます。それによって、例えば腫瘍が大きい場合には手術の前に化学療法が必要になったり、個人別治療が必要になってきます。
<手術の種類>
手術は大きくわけて、ふくらみ(乳腺)を全部切除する「乳房切除術」と、腫瘍を含めた一部分だけを切除する「乳房温存術(部分切除術)」があります。現在は乳がんを取る手術と同時でも後からでも、乳房のふくらみを作り直す「乳房再建術」ができます。乳房再建術はシリコンを使う場合や背中やお腹の筋肉を利用する方法などがあります。また、乳癌が辿り着きやすいワキ(腋窩)のリンパ節に対しては「センチネルリンパ節生検(見張りリンパ節生検)」もしくは「リンパ節郭清」が行われます。これはリンパ節転移の有無や腫瘍の大きさによって選択が異なってきます。
<術後の治療>
術後の治療は「放射線療法」、「内分泌療法」、「化学療法」に分けられます。この時にどの治療が必要かは≪乳癌のタイプ≫と≪術式≫≪閉経の有無≫などが関わってきます。≪乳がんのタイプ≫とは、どんな治療が効くタイプか、ということです。ホルモンを抑える治療が効くのか、抗がん剤が効くのか、分子標的薬が効くのかというタイプ分けがされ、そのタイプに合う治療を行っていきます。閉経後で内分泌療法が効くタイプの場合には、アロマターゼ阻害剤(AI)が適応になります。これは一般的には5年間の内服治療です。また乳房温存術を行った方の場合は、乳房内の再発を予防するために放射線照射がセットになっています。治療方法や使用薬剤は多岐にわたりますので主治医の先生とよく相談し、支えとなるご家族にもよく理解していただく必要があります。
何も異常がなくても2年に1回は乳がん検診を受けてください。
乳腺・甲状腺外科、美容 永井